第80回ベネチア国際映画祭の最高賞はヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』が受賞しましたね!
日本では2024年1月26日公開が予定されています。楽しみですね!
今回は、2015年に公開された同監督のSF恋愛映画『ロブスター』を観ましたので、ご紹介します。
この映画は、ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス合作の作品で、監督は『籠の中の乙女』で注目を集めたヨルゴス・ランティモスです。
あらすじ
独身者は、身柄を確保されホテルに送られる。そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、自ら選んだ動物に変えられ、森に放たれる。
キャスト
- デヴィッド - コリン・ファレル
- 近視の女 - レイチェル・ワイズ
- 独身者たちのリーダー - レア・セドゥ
- メイド - アリアーヌ・ラベド
- 滑舌の悪い男(ロバート) - ジョン・C・ライリー
- 足の悪い男(ジョン) - ベン・ウィショー
- 鼻血を出す女 - ジェシカ・バーデン
- ホテルのマネージャー - オリヴィア・コールマン
- 薄情な女 - アンゲリキ・パプリア
実際に観た感想
滑稽で、哀れで、どこかもの悲しい、そんな独特な映画でした。
極端な設定の世界観で、ブラックユーモアがたっぷり。
共感・理解しづらい極端な環境で展開されるシーンの連続なのですが、観てるとわずかに共感している自分に気づきます。
そんななんとも不思議な体験ができる映画です。
この映画の舞台は、家庭を持ち子孫を残すことが義務付けられた近未来です。
独身者は街のルールに従ってホテルに送られ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければなりません。
見つけられなかった場合は自分が選んだ動物に変えられてしまいます。(しかも奇跡的な変容ではなく、人為的に手術によって)
妻に捨てられたデヴィッド(コリン・ファレル)もホテルに送られ、パートナーを探すことになります。彼が選んだ動物はロブスター。(お兄さんは犬)
この映画は、極端な設定と強烈な演出で不可思議かつ衝撃的な世界観を描いています。
恋愛や結婚という普遍的なテーマを、独自の視点で風刺的に扱っています。
人間関係における共通点や相違点、偽りや嘘、束縛や自由など、さまざまな要素が混ざり合って複雑な感情を生み出します。
登場人物たちは感情的に振る舞わず、淡々とした口調で話しますが、その裏に隠された思惑や欲望が透けて見えます。
映画の中では、動物に変えられる前の独身者たちと、恋愛禁止のルールがある森に住む独身者たちという二つのグループが対比されています。
どちらも自分たちの価値観や生き方を押し付け合い、他者を排除しようとします。
その中でデヴィッドと近視の女(レイチェル・ワイズ)は恋に落ちますが、それは両方のグループのルールに反すること。
この映画は、一筋縄ではいかない恋愛や人間関係を描いていますが、それだけではありません。社会や制度によって押しつけられる役割や期待に対する抵抗や逃避もテーマになっています。
自分らしく生きることと他者と共存することの間で揺れ動く登場人物たちの姿は、現代社会における私たち自身の姿と重なります。
45日でパートナーを見つけなれば動物にされるので、本来の自分を偽ってでもパートナーになろうとする姿は痛々しい。
街で生きるためにパートナーを無理やりにでも見つけるか、恋愛禁止の森に逃げて生涯独身者として過ごすか。
どちらもルールを破るととんでもないペナルティーが待っています。
どの場面でも自身を偽らないといけないハラハラする緊張感が続き、妙な居心地の悪さがあります。
この映画は、奇妙でブラックなユーモアが満載ですが、同時に深く考えさせられる作品でもあります。恋愛や結婚という普段当たり前のように考えていることに対して、新しい視点や問いかけを与えてくれます。
- 少し変わった映画が好き!
- 感情的ではなく淡々とした演出が好き!
- ブラックユーモアが好き!
という方にオススメしたい映画です。
この映画は、2023年9月現在、Prime Videoで動画配信されています。
気になった方はぜひチェックしてみてくださいね!