年始に実家に帰った際、地元の友人が貸してくれた本が西川美和の『永い言い訳』でした。
『良かったら読む?返さなくてもいいよ~』とのこと。
私が東京に戻るため気を使ってくれているのだな。
悪いなと思いながらも、この友人が【西川美和】に惚れ込んでいることは知っていたので、ここはありがたく借りて読むことに。
昨年、同名で映画化された『永い言い訳』は観ていました。
その時は一緒に観に行く相手も吟味し、酸いも甘いも噛み分けた既婚女性の先輩と観に。
最近観た邦画の中では、印象に残るタイプのじんわり染み入る内容だった。
大人だったら大なり小なり経験した覚えのある、
醜いような寂しいような懐かしいような、様々な感情が湧きあがりました。
鼻の奥がツンとしたような、そんな気持ちになりました。
大人の友人を誘って観に行って良かったなぁ。お互いの感想も共感できる内容で、映画後の食事やお酒が美味しかったことを覚えています。
一度映画でみているものの、【西川美和】の書籍は読んだことがなかったので、
読む前には、観た映画の映像、もっくんがちらついたりするのだろうか?
映像をなぞるように小説を読むのかな~と思っていました。
それが、冒頭の
大学の時につきあった彼女は絶頂に達する直前になると、もうやめて、と決まって言った。ぼくを鼓舞する意味の「もうやめて」ではない。ほんとにやめて、自分から身体を放してしまうのだった。
彼女はしかし、ぼくを拒絶しているつもりはないと言った。
この描写、文体から、私はぐいっと物語に引き込まれてしまった。
冒頭の数行を読んだだけで、この本は、面白い予感がする!と直感してしまいました。
きっと、ただ映画の内容をなぞるだけではない体験を私にもたらしてくれるに違いない。
こういう本との出会いはそう多くあるものではない、と思っているので大事に読む心構えをしてからページをめくっていきました。
【西川美和】の描く主人公、衣笠幸夫は妻を亡くした小説家。
妻を亡くしたことで生まれた、同じく妻を亡くした大宮陽一一家との出会いと妙な絆。
衣笠幸夫は妻を亡くした夜、愛人と会っていた。
大宮陽一は仕事のトラックを運転していた。
この物語を形作るキーワードはいくつかありますが、そのどれもが
描写だけにとどまらない文体とシンプルだが丁寧なディティールの描き方で、私は何度も目頭が熱くなりました。
家へ戻る電車の中で読んでいたので、目をこすり鼻をすすることになってしまいました。。
ここでは、ネタバレになるような内容は書きませんが、この物語を読んでいろんな感情がわきあがりました。共感できる感情も、そうじゃない感情も。
身近な人の死や別れ、毎日の生活、暮らすという事。
読了後は、自分の身近な人たちの事をもっと大切にしたいな~と思えました。
かといってこの本の中で難しい表現は使っておらず、むしろ静かにスイスイ読み進める事ができます。
片意地張らずにさらっと読めるかと思います。
この本が面白かったので、もっと【西川美和】の本を読んでみたいなと思います。
そういえば、映画『ゆれる』もこの方の原作、監督だったんですね。
映画『永い言い訳』も面白かったので、オススメですよ。
もっくんの幸夫くんはズルイやさ男の演技はちろん良かったんですが、
竹原ピストルの陽一くんもとても素晴らしかったです。